山形地方裁判所 昭和61年(ワ)124号 判決 1989年4月25日
原告
佐 藤 一 雄
外八名
右原告ら訴訟代理人弁護士
高 橋 敬 義
同
安孫子 博
同
加 藤 實
同
阿 部 哲太郎
同
菊 川 明
同
三 浦 元
同
柿 崎 喜世樹
同
佐 藤 欣 哉
同
安 部 敏
同
外 塚 功
同
水 上 進
同
倉 岡 憲 雄
同
吉 村 和 彦
同
高 橋 敬 一
同
細 谷 伸 夫
同
大 江 修 司
同
縄 田 政 幸
同
武 田 正 男
被告
高 橋 留 広
外六名
主文
一 別紙請求目録被告欄記載の各被告は、同目録原告欄記載の対応する各原告に対し、各自、同目録請求金額欄記載の金員及びこれに対する同目録損害金起算日欄記載の日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。
二 訴訟費用は被告らの負担とする。
三 この判決は仮に執行することができる。
事実
第一 当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨
主文同旨
二 請求の趣旨に対する被告らの答弁
1 原告らの請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。
第二 当事者の主張
一 請求原因
1 被告らは、いずれも、昭和六〇年七月一日に大阪地方裁判所から破産宣告を受けた豊田商事株式会社(以下「豊田商事」という。)山形営業所においてセールスマンとして営業活動に従事していた者である。
2 豊田商事の詐欺的商法
(一) 同社の商法は、同社が顧客に金地金(プラチナ等も含む。)を売却し、売却代金(売買手数料を含む。)を受け取ると同時に、当該金地金を、同社が顧客から、期限(従来は一年ものもあったが大半は五年。)を定め、毎年前払いで売買代金の年一割ないし一割五分相当の賃貸料を支払う(但し、初年度分の支払いは売買代金総額から差し引く方法がとられる。)約定で借り受けるという内容の「純金ファミリー契約」を締結するものであった。
(二) 豊田商事における勧誘及び営業の実態は要旨次のとおりであった。
(1) まず、豊田商事の女子社員が電話帳等に基づき無差別に電話して金地金への投資を勧誘し、相手が明確に断らなければ、営業社員に連絡する。
(2) 連絡を受けた営業社員は、相手の自宅を訪問し、長時間居座り、「当社は、金の現物取引を行なう会社ですが、金はいつでもどこでも換金でき、しかもインフレにも強く絶対に値下がりしません。」などと、金地金への投資の有利なことを説いて、その購入を勧める。
(3) 相手が興味を示すか、金地金の購入の意思をみせると、営業社員は、さらに、「実は金を買うだけではなく、もっと有利な利殖方法があるのです。当社の純金ファミリー契約がそれです。金を預ければスイス銀行などに貸し付けて運用するので、必ず儲かるのです。年一割以上の利息を前払いで、しかも満期がくれば現物をお渡ししますので、利息と金の値上がりで二重の儲けになります。」などと、さも真実らしく申し向け、純金ファミリー契約の締結を勧める。
右勧誘に際し、営業社員は、不安に思う顧客を、営業所に連れて行き、同社のビデオを見せたり、帰られないよう他の営業社員とともに取り囲んで勧誘したりもし、結局、相手をして、金地金が自分のものになり、かつ、利息も受け取れる確実な利殖方法と信じ込ませ、金地金の売買契約及び純金ファミリー契約を締結させて、その代金名下に金員を支払わせる。
(三) 豊田商事は、客との間の契約を履行する意思も能力もなかったもので、このことは、次のとおりの、同社の業務・資産運用の実態から明白である。
(1) 同社は金地金売買代金として資金を受領しながら、契約期間中はこれに対応する現物を仕入れず、自社内での保有もしていなかった。
(2) 他方、右資金は、従業員に対する高額な給与及び歩合報酬の人件費や店舗賃貸料等の経費に六割が費消された外、危険な商品先物取引への投資や、回収見込みのない関連会社への貸付にまわされていた。
(3) その結果、同社は、相当の粉飾があるとみられる同社作成の決算書によっても、売上高が会社設立年度である昭和五六年度五七億七六三四万二八一二円、昭和五七年度二二六億五八九九万九三七七円、昭和五八年度四二〇億七四八四万七四八三円と飛躍的な伸びを示しながら、設立以来一期も利益を計上せず、各年度の営業損失が各々六二八六万四三九〇円、五六四六万三一七〇円、八〇七九万七二一六円を計上しており、破産直前である昭和六〇年三月末の営業年度の損失は、三三六億円にも達していた。
(4) そのため、同社は、昭和五八年夏以降、それまで純金ファミリー契約の主流であった一年ものを五年ものに切替えして、同社の破綻を先送りした。
(四) したがって、豊田商事の商法は、金地金等の取引実態につき無知である顧客を選別し、金地金等を購入する意思も能力もなく、また、純金ファミリー契約上の賃貸料の支払意思も能力もないのに、これあるように装い、顧客をして本件契約締結により安全確実に利益が得られるものと誤信させ、金地金売買代金名下に金員を騙取する、会社ぐるみの組織的詐欺行為であったことが明らかである。
3 被告らの責任
(一) 被告らは、豊田商事の従業員として、同社が一等地のビルを賃借りして高額の賃貸料を支払っており、自分達には高額の固定給及び歩合給を支払い、客には高額の賃貸料を支払わねばならないことなどを知っていたし、また、同社の商法を「現物まがい商法」として、これを非難する報道が昭和五六年末ころから広く行われていたことも知っていたのであるから、純金ファミリー契約が金地金の裏付けのないもので、将来金地金を返還することが不可能ないし著しく困難であって客に損害を及ぼす危険性が高いものであることを認識していたか、少なくとも、通常の注意を払えば容易に認識しえた。
しかるに、被告らは、後記(二)のとおり、自らも積極的に虚偽の事実、すなわち、同社が間違いなく金地金を保有しており、満期には金地金が確実に返還され、かつ、それまでの間、約定の賃料名下の金員が支払われると申し向けるなどして長時間執拗に勧誘し、その旨誤信した原告らに純金ファミリー契約を締結させて、売買代金名下に現金を交付させたものであるから、それが不法行為に該当することは明らかである。
したがって、被告らは、各自、その勧誘にかかる原告らが交付した現金相当額の損害を賠償すべき義務がある。
(二) 被告らの対応する各原告に対する具体的な勧誘行為の内容及びこれによる原告らの損害額は次のとおりである。
(1) 原告佐藤一雄について
被告高橋留広は、昭和五九年八月一日、原告佐藤方を訪れ、同原告に対し、「金は値上がりはするが値下がりはしない。郵便局や銀行の利息は物価の変動に追いつけず、何にもならない。」などと虚偽の事実を述べて執拗に勧誘し、金取引により安全確実に利殖できると誤信した同原告をして、金一〇〇グラムの取引を決意させて純金注文書及び純金ファミリー契約書に署名捺印させ、翌二日、金売買代金名下に二四万四九九五円を交付させて同額の損害を負わせた。
さらに、被告高橋は、錯誤に陥っている同原告をして、前同様の方法で、同月三日、金一キログラムの売買代金名下に二三八万五七二〇円を、同月六日、金一〇〇グラムの売買代金名下に二四万七八三〇円を、それぞれ交付させて同額の損害を負わせた。
(2) 原告伊豆田勘治について
原告伊豆田に対しては、昭和五七年一二月ころより豊田商事山形営業所の従業員が訪問し、「金は絶対安全な利殖方法です。会社も堅実で絶対大丈夫。」などと勧誘し、安全な取引と誤信した同原告をして金売買代金名下に金員を交付させていたものであるが、被告渋谷は、昭和六〇年二月二六日ころ、同原告方を訪問し、同原告に対し、「郵便貯金は駄目になり、銀行預金も危ない。某信託会社も我が社をまねて、似たような商品を出しているが、我が社のほうが一番確実である。」などと虚偽の事実を述べて執拗に勧誘し、同原告をして、金一キログラムの取引を決意させて純金注文書及び純金ファミリー契約書に署名捺印させ、そのころ、金売買代金名下に二〇八万八〇〇〇円を交付させて同額の損害を負わせた。
(3) 原告熊谷栄作について
被告千葉善照は、昭和五九年八月一七日ころ、原告熊谷方を訪問し、同原告に対し、「金は絶対値下がりしない。いつでも換金できるが、換金すると七〇パーセント位にしかならない。」などと虚偽の事実を述べて勧誘し、金取引により安全確実に利殖できると誤信した同原告をして、金三キログラムの取引を決意させて純金注文書及び純金ファミリー契約書に署名捺印させ、同月二四日、金売買代金名下に七一三万五七四〇円を交付させて同額の損害を負わせた。
(4) 原告居鶴憲也について
原告居鶴に対しては、かねて豊田商事山形営業所の従業員が勧誘し、安全な取引と誤信した同原告をして金売買代金名下に金員を交付させていたものであるが、被告三谷つや子は、昭和五九年六月ころから、同原告方を訪れ、同原告に対し、「デノミになる。給料が一〇分の一になる、金なら価値が下がらない。」などと虚偽の事実を述べ、その旨誤信した同原告をして、金二キログラムの取引を決意させて純金注文書及び純金ファミリー契約書に署名捺印させ、同年八月二二日、金売買代金名下に四五九万円を交付させて同額の損害を負わせた。
(5) 原告吉田芳太郎について
被告田内憲二は、昭和六〇年四月ころから、原告吉田宅を訪れ、同原告に対し、「一〇万円札が出てお金の値打ちが下がる。銀行は倒産し、山形銀行だけになる。貯金はだめで金は絶対有利だ。」などと虚偽の事実を述べ、何度も断った同原告を執拗に勧誘し、その旨誤信した同原告をして、同年四月二四日に金四一〇〇グラムの、同月二五日に金一〇〇グラムの、同年五月二日に金一〇〇グラムの、各取引を決意させて、純金注文書及び純金ファミリー契約書に各署名捺印させ、金売買代金名下に、同年四月二四日に九三一万九五六〇円、同月二五日に二三万五八九〇円、同年五月二日に二三万二九八〇円を各交付させて同額の損害を負わせた。
(6) 原告梅津しげのについて
被告三谷は、昭和五九年三月七日、同原告方を訪れ、同原告に対し、「金を買っても絶対心配ない。損はしない。現金を持っていても値打ちが下がるだけだ。」などと虚偽の事実を述べて執拗に勧誘し、金取引により安全確実に利殖できると誤信した同原告をして、翌八日に金一〇〇グラムの、同月九日に金一キログラムの、各取引を決意させて、純金注文書及び純金ファミリー契約書に各署名捺印させ、金売買代金名下に、同月八日に二六万三一〇〇円、同月九日に二五二万四七四〇円を各交付させて同額の損害を負わせた。
なお、同原告は、豊田商事から、昭和六〇年四月八日、賃借料名目で四六万三五〇〇円の支払を受けたから、同被告の右不法行為による損害額は、これを控除した二三二万四三四〇円となる。
さらに、被告二上勇一及び同渋谷は、昭和六〇年五月七日ころ、同原告に対し、「今度お金も閉鎖されて、値打ちは下がり使えなくなるかもしれない。国の方も財政難で利子などが支払えなくなる。金は外国から入るので値下がりして損することはない。」などと虚偽の事実を述べて執拗に勧誘し、前同様の方法で、同原告をして、同月八日、金一四〇〇グラムの売買代金名下に三一八万五七〇〇円を交付させて同額の損害を負わせた。
(7) 原告金子吉助について
被告丸子幸男は、昭和五九年一一月一一日ころ、原告金子宅を訪れ、同原告に対し、「豊田商事は日本でも有名な会社です。山形にも立派な営業所を出しているので是非一度見に来て下さい。」などと述べて勧誘し、翌一二日、同原告を山形営業所に連れて行き、金原良典とともに同原告に対し、「金は定期預金よりも確実で有利な財産です。金を買って当社に預けておけば、当社からの配当で家を一軒建てることもできます。」などとこもごも虚偽の事実を述べて執拗に勧誘し、金取引により安全確実に利殖できると誤信した同原告をして、翌一三日に金七七〇〇グラムの取引を決意させて、純金注文書及び純金ファミリー契約書に各署名捺印させ、同月一三日、金売買代金名下に一八一八万五八八〇円を交付させて同額の損害を負わせた。
さらに、同被告は、同月三〇日ころ、前記勧誘により錯誤に陥っている同原告に対し、追加契約の締結を勧誘し、前同様の方法で、同原告をして、同日、金一キログラムの売買代金名下に二二九万〇五六〇円を交付させて同額の損害を負わせた。
(8) 原告斎藤スエについて
被告二上は、昭和五九年七月七日ころ、原告斎藤方を訪れ、同原告に対し、「今、お金を持っていても段々値打ちが下がる。金を買ってウチに預けておけば銀行と同じだし、利子が高くつくから利子だけで食べていかれる。」などと述べ、その後も三回ほど右同様の虚偽の事実を述べて執拗に勧誘し、金取引により安全確実に利殖できると誤信した同原告をして、金四〇〇グラムの取引を決意させて純金注文書及び純金ファミリー契約書に署名捺印させ、同月一八日、金売買代金名下に九七万六九三五円を交付させて同額の損害を負わせた。
さらに、同被告は、昭和六〇年一月初旬ころ、同原告方を訪れ、同原告に対し、「四枚では死に金に通じるから縁起が悪い。死に金ではお客さんに申し訳ないし、絶対儲かるからもう一口加入してくれ。」などと述べて勧誘し、前同様の方法で、同原告をして、同月一一日ころ、金一〇〇グラムの売買代金名下に二二万五八七〇円を交付させて同額の損害を負わせた。
(9) 原告石山善太郎について
原告石山に対しては、昭和五九年六月二六日ころ、金原及び能代谷浩志が訪れ、同人に対し、「今年末にはお札が一新されるが、その後お金の封鎖があり、一〇〇万円は一〇万円の価値しかなくなる。金を買っていれば金の価値は変わらないから損はしない。豊田商事は自動車会社で有名な豊田グループの一員だから安心して良い。」などとこもごも虚偽の事実を述べて執拗に勧誘し、金取引により安全確実に利殖できると誤信した同原告をして金員を交付させていたが、被告渋谷は、同年一〇月二〇日及び同年一一月一二日、原告方を訪れ、既に誤信している同原告に対し、金原らが述べたと同様の虚偽の事実を述べて勧誘し、金取引により安全確実に利殖できると誤信した同原告をして、同年一〇月二〇日に金一二〇〇グラムの、同年一一月一二日に金五〇〇グラムの、各取引を決意させて純金注文書及び純金ファミリー契約書に各署名捺印させ、金売買代金名下に、同年一〇月二〇日に二八五万四六八〇円、同年一一月一二日に一一八万九〇三〇円を各交付させて同額の損害を負わせた。
よって、原告らは被告らに対し、不法行為の損害賠償請求権に基づき、別紙請求目録被告欄記載の各被告が同目録原告欄記載の対応する原告に対して、各自、前記各損害額から豊田商事の破産事件において配当を受けた金員を控除した残額である同目録請求金額欄記載の損害金及びこれに対する各不法行為日の後である同目録起算日欄記載の日から支払済みに至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金を支払うよう求める。
二 請求原因に対する被告らの認否
(被告高橋)
1 請求原因1の事実は認める。
2 同2について
(一) 同(一)の事実は認める。
(二) 同(二)の事実は全て否認する。
(三) 同(三)の事実は全て不知。
(四) 同(四)の主張は争う。
3 同3について
(一) 同(一)の事実は否認し、主張は争う。
被告高橋は、豊田商事に勤務していた当時、同社の経営状態は知らず、同社を信頼して営業活動をしていたにすぎない。
(二) 同(二)(1)のうち、被告高橋が原告佐藤を勧誘し、これにより同原告が純金ファミリー契約を締結して金地金売買代金名下に金員を支払ったことは認め、勧誘行為の内容は否認する。
同被告は、同原告に対し、金の価格が昭和四五年から同五九年まで上がり下がりしながらも、長期的には物価上昇にみあう上昇をしていることや、マル優の現状と今後の見通し、郵便貯金の現状を説明し、納得の上で金を購入してもらった。
(被告渋谷)
1 請求原因1の事実は認める。
2 同2の事実は全て否認する。
3 同3について
(一) 同(一)の事実は否認し、主張は争う。
被告渋谷は、豊田商事に勤務していた当時、自分自身も金地金の売買契約をしていたのであり、同社を信じて営業活動をしていたにすぎない。
(二) 同(二)について
(1) 同(2)のうち、原告伊豆田に対し、豊田商事山形営業所の従業員が勧誘していたこと及び被告渋谷が原告伊豆田方を訪問したことは認め、その余の事実は否認する。
同被告は、上司の鹿野課長とともに同原告方を訪問し、同原告への勧誘も全て同課長がしたもので、同被告はヘルプとして同行し、隣に座っていただけであって、同原告とは何も話していない。
(2) 同(6)のうち、同被告が原告梅津を勧誘したこと、その際、同原告主張のように述べたことは認め、その余の事実は否認する。
同被告は、上司から、同原告主張のような話を必ずするよう社員教育を受けていたので、そのように話したものである。
なお、同被告が入社以来、上司は何人も変わったが、指導されるセールストークの内容は同様であった。
(3) 同(9)のうち、同被告が原告石山を勧誘し、同原告が金売買契約を締結したことは認め、その余の事実は否認する。
同被告は、同原告に対しても、指導されていたとおりのセールストークを述べたにすぎない。
(被告千葉)
1 請求原因1の事実は認める。
2 同2の事実は全て否認する。
3 同3について
(一) 同(一)の事実は否認し、主張は争う。
(二) 同(二)(3)のうち、被告千葉が原告熊谷方を訪問し、同原告を勧誘したことは認め、その余の事実は否認する。
同被告は、同原告方を訪問した際、純金には税金がかからないこと、現金の価値は目減りするから純金に代えておいた方が良いことなどを説明したところ、同原告は、納得して、その場で金一〇〇グラムの契約を締結し、後日、豊田商事山形営業所に代金を持参した。その際、上司が追加契約の勧誘をし、同原告はこれに応じた。同被告は、右追加契約に関しては、全て上司に任せていた。
(被告三谷)
1 請求原因1の事実は認める。
2 同2について
(一) 同(一)の事実は知らない。
(二) 同(二)のうち(3)の事実は否認する。
(三) 同(三)の事実は全て知らない。
3 同3について
(一) 同(一)の事実は否認し、主張は争う。
(二) 同(二)について
(1) 同(4)のうち、原告居鶴に対し、かねて豊田商事山形営業所の従業員が勧誘していたこと、被告三谷が、同原告方を訪問したこと、同原告が純金ファミリー契約を締結したことは認め、その余の事実は否認する。
同原告は、同被告が勤務する以前からの豊田商事の高額契約者であったもので、同被告は、同原告方に、以前の契約に基づく賃借料を持参したにすぎず、その際、同原告が自己の判断で追加契約をした。
(2) 同(6)のうち、同被告が原告梅津方を訪問したこと、同原告が金一〇〇グラム及び金一キログラムの各純金ファミリー契約を締結したことは認め、その余の事実は否認する。
同原告は、同被告が訪問した際に一〇〇グラムの契約をし、翌日、豊田商事山形営業所に来社し、上司との間で一キログラムの契約をしたもので、いずれの契約も同原告が自らの判断で納得してした。
(被告田内)
1 請求原因1の事実は認める。
2 同2について、(二)の事実は否認し、(三)の事実は全て知らない。
3 同3について
(一) 同(一)の事実は否認し、主張は争う。
被告田内は、豊田商事に勤務していた当時、同社の経営状態などは何も知らず、上司から教えられることを信じて仕事をしてきたにすぎない。
(二) 同(二)(5)のうち、同被告が、原告吉田方を訪問し、同原告を勧誘したことは認め、その余の事実は否認する。
(被告丸子)
1 請求原因1の事実は認める。
2 同2の事実は全て否認する。
3 同3について
(一) 同(一)の事実は否認し、主張は争う。
被告丸子は、豊田商事に勤務していた当時、平社員で、同社及び上司を信頼し、指導されるとおりに仕事に従事したにすぎない。また、当時、同社では、満期がきた客には純金を返し、また、期日には賃借料を支払っていたから、同被告は、同社の商法が詐欺的なものとは思わなかったし、そう信じて仕事をしたことに過失もない。
(二) 同(二)(7)のうち、同被告が原告金子方を訪問し、同原告を豊田商事山形営業所に案内したこと、同営業所において、同被告が、金原とともに同原告を勧誘し、二度契約を締結して現金を受領したことは認め、その余の事実は否認する。
同営業所では、ほとんど金原が説明し、同原告は納得して契約した。
(被告二上)
請求原因1の事実は認め、その余の事実は否認する。
第三 証拠<省略>
理由
一請求原因1の事実(被告らが豊田商事山形営業所の営業担当従業員であったこと)は全ての当事者間に争いがない。
二豊田商事の商法及びその違法性(請求原因2)について
1 豊田商事の商法が、同社が顧客に金地金(プラチナ等も含む。)を売却し、売却代金(売買手数料を含む。)を受け取ると同時に、当該金地金を、同社が顧客から、期限(従来は一年ものもあったが大半は五年。)を定め、毎年前払いで売買代金の年一割ないし一割五分相当の賃貸料を支払う(但し、初年度分の支払いは売買代金総額から差し引く方法がとられる。)約定で借り受けるという内容の「純金ファミリー契約」を締結するというものであったこと(請求原因2(一))は、原告らと被告高橋間では争いがなく、原告らとその余の被告らとの間では、原告らと被告田内を除くその余の被告ら間で成立に争いがなく、原告らと被告田内の間では弁論の全趣旨により成立を認める甲第一号証によりこれを認めることができる。
2 <証拠>を総合すると、豊田商事における勧誘及び営業の実態に関し、次の各事実を認めることができ、この認定を覆すに足る証拠はない。
(一) 豊田商事では、まず、テレホンレディーと呼ばれる女子社員が電話帳等に基づき無差別に電話し、金地金への投資を勧誘しつつ、相手の資産状態などを聞き出し、相手が明確に断らなければ、営業担当の管理職に連絡する。
(二) 右連絡を受けた営業担当の管理職は、営業社員と呼ばれる営業担当の従業員に勧誘をするよう指示し、営業社員は、相手の自宅を訪問する。
営業社員は、入社時の研修等で受けていた勧誘方法の指導に従い、できる限り長時間客宅に居座り、まず、世間話などをして客の警戒心を解くよう努めた後、「純金は現金と同じであって、いつでもどこでも換金できる上、税金がかからず、しかも、預貯金等が物価上昇により目減りするのに対し、純金は少なくとも五年ないし一〇年の期間でみれば値上りが大きく、他の利殖方法より有利かつ安全である。」などと、金地金の購入を勧め、さらに、相手が金地金に興味を示すと、「金の現物をそのまま保管していても盗難の危険がある。当社の純金ファミリー契約を締結して、金を当社に預けると、年一割以上の利息を前払いで支払い、しかも満期がくれば現物をお渡ししますので、利息と金の値上がりで二重の儲けになる。」などと述べて、純金ファミリー契約の締結を勧める。
(三) 営業社員は、客宅から電話を借りて豊田商事に連絡を入れるよう指導を受けており、客が、訪問した営業社員の勧誘にうまく乗ってこない場合には、右連絡を受けた同社において、他の営業社員を応援に派遣して、数人がかりで勧誘をすることも行われた。
また、豊田商事は、一流企業であるように見せ掛けるため、一等地に豪華な設備や調度品を備えた支店や営業所を設けており、営業社員には、客が勧誘に応じると否とに関わりなく、客を営業所に連れて来るように指導していた。営業社員が営業所に連れて来た客に対しては、主として上司が、豊田商事が信頼のおける立派な会社であることを宣伝するビデオや、見本として営業所に置いてあった金地金の現物を見せるなどしながら勧誘にあたっていた。
(四) 以上のような勧誘行為、特に豪華な営業所に連れてこられてビデオや金地金の現物を見せられながら言葉巧みに勧誘されることにより、当初は営業社員の話に疑念を抱いた客も、純金ファミリー契約をもって、金地金が自分のものになり、かつ、利息も受け取れる確実な利殖方法であると信じるようになり、金地金の売買契約及び契約を締結して、その代金名下に金員を支払った。
3 <証拠>によれば、豊田商事の経営状態について次の事実を認めることができ、この認定を覆すに足る証拠はない。
(一) 豊田商事は、金地金売買代金として資金を受領しながら、本件契約期間中はこれに対応する現物を仕入れず、客を勧誘するために用いる見本としてのもの以外には、金地金をほとんど自社内に保有していなかった。
(二) 同社の収益の大半は、純金ファミリー契約を締結することにより金地金売買代金として入金された金員であり、その総額は約二〇二〇億円に達したが、このうち、同契約による賃借料などによって客に返還されたのは約五五〇億円にすぎず、従業員に対する一般企業に比して著しく高額な固定給、歩合報酬などの人件費や、一等地に借りていた支店、営業所の店舗賃貸料等の経費にその六割に相当する約八六〇億円(このうち人件費には約六〇〇億円)が費消された外、危険な商品先物取引へ一一〇から一二〇億円が投資されて、その全額が費消し尽くされ、その余は、回収見込みのない関連会社への貸付にまわされていた。
(三) このため、同社は、期限が倒来した純金ファミリー契約について金地金を購入して客に返還するために、自転車操業的に、新規の純金ファミリー契約を締結して金地金売買代金名下に金員の交付を受けざるを得ない状態であった。そこで、同社は、客への金地金の返還をできる限り遅らせるために、昭和五八年七月ころから、五年ものの純金ファミリー契約証券を売り出し、それまでの主流であった一年ものを五年ものに切替える方針をとり、さらに、同五九年夏ころからは、現物返還の必要のないレジャー会員証券を売り出し、純金ファミリー契約証券をこのレジャー会員証券に切り替えるようにした。
(四) しかし、同社は、同六〇年七月一日、破産宣告を受ける結果となった。
(五) 以上のような経営状態の結果、同社は、設立から破産に至るまで毎期損失を計上し続け、その総額は、同社作成にかかる損益計算書による計算上のそれでも八三九億九三二九万八四六一円に達していた。
4 しかして、以上の認定事実を総合すると、豊田商事は、期限が到来するまで客から預かった売買代金に対応する金地金を購入しなかったし、契約上の返還期限に金地金を購入して客に返還することも不可能になることが予め明らかであったのに、これあるように装い、従業員をして客に対し、純金ファミリー契約締結により他の投資方法よりも有利な利益が安全、確実に得られるかのごとき虚偽の事実を申し向けさせ、客らにその旨誤信させ、金地金売買代金名下に金員を交付させたものと認めることができるから、同社の商法が詐欺に該当する違法なものであることは明らかである。
三被告ら豊田商事の営業担当従業員の責任
1 <証拠>を総合すると、次の事実を認めることができ、この認定を覆すに足る証拠はない。
(一) 豊田商事の営業担当従業員が一般企業に比し著しく高額の固定給及び歩合報酬を支給されていたことは前記のとおりであるが、このことは同社山形営業所においても異なるところはなく、被告らは、自分や同僚がしばしば一〇〇万円を越える高額の給与を支給されていたことを知っており、被告渋谷や同三谷などは、自分達にこのように高額の給与を支給し、他方で客には五年もので年一五パーセントという高率の賃借料を支給し、また、一等地に賃借している営業所の賃料を支払いながら、豊田商事が利益を上げることができるのだろうかと、率直に疑問を感じていた。
(二) マスコミは、昭和五六年九月ころから、豊田商事の商法をいわゆる悪徳商法の一つの形態として取り上げ、同社の商法に対する批判報道を頻繁に繰り返した。特に、同五八年中ころ以降は、同社が客に対し純金ファミリー契約上の金地金の返還義務を履行しなかったことなどを巡って紛争が多発し、従業員から同社の商法が詐欺的なものであるとの内部告発がなされ、通産省が同社の商法について消費者への注意を促す広報活動をし、また、国会においても同社の商法の問題性が議論されるようになり、さらに、同五九年三月には、「同社は、実際は顧客との取引高に相当する金地金を保有していない上、客から受け取った現金を営業経費につぎ込むなど経営が思わしくないのに、これを隠して勧誘したのは詐欺罪と出資法違反罪(違法営業)に当たる」として客から告訴がなされたが、これらのことは、マスコミにより、広く報道された。
(三) 豊田商事では、新聞等に批判記事が出ると、朝礼などで上司が演説するなどして、従業員の動揺を抑えようとしたが、それにもかかわらず、多くの従業員が、同社の商法がマスコミの報道のとおりの詐欺的なものであると感じて退社していったし、また、残った営業社員の中には、「さあ、また騙しに行って来るか。」などと自嘲しながら勧誘に出掛ける者もあった。
(四) 豊田商事山形営業所においても、新聞に同社の商法を批判する記事が出るなどしたときには、多くの営業社員が不安を抱き、その記事をめぐって営業社員同士で話し合ったりもした。これに対し、同営業所では、上司が従業員に、「出る杭は打たれるということで、今は批判されているだけだ。」とか、「豊田商事は関連会社に融資して充分な利益を得ている。」などと話していたが、同社が、高額の人件費及び事務所賃借料を負担しながら、客に対する高率の賃料支払及び金地金返還義務を履行するために当然必要となる極めて高い収益を、どのようにしてあげているのかという点については、具体的な説明はなされなかった。
2 しかして、以上の認定事実によれば、被告ら営業社員は、豊田商事が、自分達への異常に高額な給与を含め、多額の経費を費やしていて、極めて高率の収益を維持しなければ客に対する純金ファミリー契約上の義務を履行することができないものであることを認識していた一方、マスコミの厳しい批判報道にもかかわらず、同社が、どのようにして右の高収益を得ているかにつき、自分達従業員にすら具体的に納得のいく説明をするところがないことを体験していたのであるから、少なくとも、同社が客から金地金売買代金名下に受領した金員を経費に消費してしまっているとの批判報道が真実であって、金地金を純金ファミリー契約の約定どおり客に償還することが不可能または著しく困難であることを容易に認識しえたものというべきである。
してみると、被告らが純金ファミリー契約の締結に向けて勧誘行為をしたこと自体、少なくとも過失による不法行為に該当するものといわざるをえず、したがって、被告らは、自らが単独もしくは他の営業社員と共同して右勧誘行為をしたことにより純金ファミリー契約を締結し、金売買代金名下に金員を支払った客に対し、右代金額に相当する損害を賠償すべき義務があるというべきである。
四各原告に対する対応する被告の勧誘行為及びこれによる各原告の損害について
1 原告佐藤について
被告高橋が原告佐藤を勧誘し、これにより同原告が純金ファミリー契約を締結して金地金売買代金名下に金員を支払ったことは右当事者間に争いがなく、右争いのない事実に、<証拠>を総合すると、同被告は、昭和五九年八月一日、同月三日及び同月六日の三回にわたって、同原告に対し、金地金の購入及び純金ファミリー契約の締結を勧誘し、同原告をして、同月二日に金地金一〇〇グラムの、同月三日に同一キログラムの、同月六日に同一〇〇グラムの、各売買契約及び純金ファミリー契約を締結させ、同月二日に二四万四九九五円、同月三日に二三八万五七二〇円、同月六日に二四万七八三〇円を、右各売買代金名下に交付させて同額の損害を負わせたことが認められ、この認定を左右するに足る証拠はない。
2 原告伊豆田について
被告渋谷が原告伊豆田方を訪問したことは当事者間に争いがなく、右争いのない事実に、<証拠>を総合すると、同被告は、昭和六〇年二月二六日ころ、上司の鹿野幸隆と共同して、同原告に対し、金地金の購入及び純金ファミリー契約の締結を勧誘し、同原告をして、そのころ、金地金一キログラムの売買契約及び純金ファミリー契約を締結させて、右売買代金名下に二〇八万八〇〇〇円を交付させ、同額の損害を負わせたことが認められ、この認定を左右するに足る証拠はない。
3 原告熊谷について
被告千葉が原告熊谷を勧誘したことは右当事者間に争いがなく、右争いのない事実に、<証拠>を総合すると、同被告は、昭和五九年八月一七日から同月二四日までの間、単独ないし上司の川井元などと共同して、同原告に対し、金地金の購入及び純金ファミリー契約の締結を勧誘し、同原告をして、同日、金地金三キログラムの売買契約及び純金ファミリー契約を締結させて、右売買代金名下に七一三万五七四〇円を交付させ、同額の損害を負わせたことが認められ、この認定を左右する証拠はない。
4 原告居鶴について
被告三谷が原告居鶴方を訪問したこと及び同原告が純金ファミリー契約を締結したことは右当事者間に争いがなく、右争いのない事実に、<証拠>を総合すると、同被告は、昭和五九年八月二二日ころ、上司の川井と共同して、同原告に対し、金地金の購入及び純金ファミリー契約の締結を勧誘し、同原告をして、同日、金地金二キログラムの売買契約及び純金ファミリー契約を締結させて、右売買代金名下に四五九万円を交付させ、同額の損害を負わせたことが認められ、この認定を左右する証拠はない。
5 原告吉田について
被告田内が原告吉田を勧誘したことは右当事者間に争いがなく、右争いのない事実に、<証拠>を総合すると、被告田内は、昭和六〇年四月七日ころから同年五月二日までの間、単独ないし他の営業社員と共同して、同原告に対し、金地金の購入及び純金ファミリー契約の締結を勧誘し、同原告をして、同年四月二四日に金地金四一〇〇グラムの、同月二五日及び同年五月二日に同各一〇〇グラムの、各売買契約及び純金ファミリー契約を締結させて、同年四月二四日に九三一万九五六〇円、同月二五日に二三万五八九〇円、同年五月二日に二三万二九八〇円を、右各売買代金名下に交付させ、同額の損害を負わせたことが認められ、この認定を左右する証拠はない。
6 原告梅津について
被告三谷が原告梅津方を訪問したこと並びに同原告が金一〇〇グラム及び金一キログラムの各純金ファミリー契約を締結したことは右当事者間に争いがなく、右争いのない事実に、<証拠>を総合すると、同被告は、昭和五九年三月七日及び翌八日、単独ないし上司の半田重博と共同して、同原告に対し、金地金の購入及び純金ファミリー契約の締結を勧誘し、同原告をして、同月七日に金地金一〇〇グラムの、翌八日に同一キログラムの、各売買契約及び純金ファミリー契約を締結させて、同日に二六万三一〇〇円、同月九日に二五二万四七四〇円を、右各売買代金名下に交付させ、同額の損害を負わせたことが認められ、この認定を左右する証拠はない。
また、被告渋谷が同原告を勧誘したことは右当事者間に争いがなく、右争いのない事実に、<証拠>を総合すると、被告二上は、昭和六〇年五月七日、同原告に対し、金地金の購入及び純金ファミリー契約の締結を勧誘し、さらに、同被告及び同渋谷は、翌八日、共同して、同原告に対し、同様に勧誘し、同原告をして、同日、金地金一四〇〇グラムの売買契約及び純金ファミリー契約を締結させて、右売買代金名下に三一八万五七〇〇円を交付させ、同額の損害を負わせたことが認められ、この認定を左右する証拠はない。
7 原告金子について
被告丸子が原告金子方を訪問し、同原告を豊田商事山形営業所に案内したこと、同営業所において、同被告が金原とともに同原告を勧誘したこと、同原告が二度契約を締結して現金を支払ったこと、以上の事実は右当事者間に争いがなく、右争いのない事実に、<証拠>を総合すると、同被告は、昭和五九年一一月一一日ころから同月三〇日までの間、単独ないし上司の金原と共同して、同原告に対し、金地金の購入及び純金ファミリー契約の締結を勧誘し、翌一三日に金地金七七〇〇グラムの、同月三〇日に同一キログラムの、各売買契約及び純金ファミリー契約を締結させて、同月一三日に一八一八万五八八〇円、同月三〇日に二二九万〇五六〇円を、右各売買代金名下に交付させて同額の損害を負わせたことが認められ、この認定を左右する証拠はない。
8 原告斎藤について
<証拠>を総合すると、同被告は、昭和五九年七月七日ころから同月一八日までの間及び昭和六〇年一月初旬ころから同月一一日までの間、同原告に対し、金地金の購入及び純金ファミリー契約の締結を勧誘し、同原告をして、同五九年七月一八日に金地金四〇〇グラムの、同六〇年一月一一日に同一〇〇グラムの、各売買契約及び純金ファミリー契約を締結させて、同五九年七月一八日に九七万六九三五円、同六〇年一月一一日に二二万五八七〇円を、右各売買代金名下に交付させ、同額の損害を負わせたことが認められ、この認定を左右する証拠はない。
9 原告石山善太郎について
被告渋谷が原告石山を勧誘し、同原告が金売買契約を締結したことは右当事者間に争いがなく、右争いのない事実に、<証拠>を総合すると、被告渋谷は、同年一〇月二〇日及び同年一一月一二日、同原告に対し、金地金の購入及び純金ファミリー契約の締結を勧誘し、同原告をして、同年一〇月二〇日に金地金一二〇〇グラムの、同年一一月一二日に同五〇〇グラムの、各売買契約及び純金ファミリー契約を締結させて、同年一〇月二〇日に二八五万四六八〇円、同年一一月一二日に一一八万九〇三〇円を、右各売買代金名下に交付させ、同額の損害を負わせたことが認められ、同被告本人尋問の結果中、右認定に反する部分は、前掲その余の各証拠に照らして容易に措信し難く、他に右認定を左右する証拠はない。
五結論
以上の次第で、原告らの対応する被告らに対する請求はいずれも理由があるからこれを認容し、訴訟費用の負担について民訴法八九条、九三条を、仮執行の宣言について同法一九六条を、それぞれ適用して、主文のとおり判決する。
裁判長裁判官斎藤清實 裁判官小野田禮宏 裁判官始関正光)
別紙
請求目録
原告
請求金額
被告
損害金起算日
1
佐藤一雄
二六四万八二六二円
高橋留広
昭和六一年一一月一八日
2
伊豆田勘治
一九二万〇九六〇円
渋谷健一
昭和六一年一一月六日
3
熊谷栄作
六五六万四八八一円
千葉善照
昭和六二年一月二三日
4
居鶴憲也
四二二万二八〇〇円
三谷つや子
昭和六一年一二月一三日
5
吉田芳太郎
九〇〇万五三五六円
田内賢二
昭和六一年一一月九日
6
梅津しげの
二一三万八三九三円
三谷つや子
昭和六一年一二月一三日
二九三万〇八四四円
二上勇一
昭和六一年一一月七日
渋谷健一
昭和六一年一一月六日
7
金子吉助
一八八三万八三二六円
丸子幸男
昭和六一年一一月九日
8
斎藤スエ
一一〇万六五八一円
二上勇一
昭和六一年一一月七日
9
石山善太郎
三七二万〇二一四円
渋谷健一
昭和六一年一一月六日